保険診療と自由診療

中国の保険制度-鳥インフルエンザは国が面倒をみるべき?

経済発展著しい中国ですが、医療システムはまだ十分に確立されていないようです。近年ニュースとなっている鳥インフルエンザにおいても、その治療費の扱いをめぐって議論が起き、保険制度の脆弱さが浮き彫りになりました。


鳥インフルエンザの治療費は誰が出す?

中国にも国民皆保険制度はあります。しかし日本と異なり、患者さんがまず自分で全額を支払ってから給付されるシステムで、その補償範囲も狭く、「金払いの悪さ」が問題となっています。
中国で起こった鳥インフルエンザでも、その治療が健康保険の補償対象となるかどうかについて意見が分かれました。2002年に中国で発生した新型肺炎の「SARS」では、ヒトからヒトへの感染だったため治療費は無料でしたが、鳥インフルエンザの場合は「自分で気をつければ感染は防げる」とする見方があるためです。
中国メディアのニュースによると、南京市で鳥インフルエンザにかかって重体となった女性では、ICUでの治療費が1日1万元(約16万円)にもなり、家計がひっ迫。患者さんの家族は「治療費をどうにかしてほしい」と訴え続けていました。
民間保険会社も、鳥インフルエンザに特化した保険商品には消極的です。「発生例が少ない上に、拡散するかどうかもデータが乏しい」ことが原因だといわれます。
中国では「病院は高い」という感覚が通常ですので、体調が悪くても市販薬で何とかしようとする人がほとんどです。鳥インフルエンザでも、受診が遅れたために重体となった人が多く、医療保険制度の弱さが露呈した形となりました。


闇診療所が横行する現状

中国では、もともと国の医療保険に加入できるのは、公務員や企業の会社員のみでした。人口の半数を占める農民や自営業者たちは無保険の状態だったのです。 しかし2003年から皆保険制度が広まり、2011年末には95パーセントの国民が加入したと発表されています。
ただし前述の通り、加入者は窓口でいったん全額を支払わなくてはいけません。その後、受けた治療が保険の適用となるかどうかが検討されるのですが、たとえば2010年では保険を活用できた高齢者は都市部でたったの3.2パーセント、農村で4.3パーセントのみという報告があります。つまりほとんどは全額自己負担となっているのです。
そんな中、「闇診療所」はまだまだ繁盛しているようです。国の認可を受けていない診療所で、不衛生なところも多いといいますが、医療費を考えると頼らざるを得ない状況があります。 特に農村から都市部へ出稼ぎに来る労働者たちは、戸籍制度の弊害で戸籍を都市部に移せないため、医療などの公共サービスを出稼ぎ先で受けられないのが現状です。 中国の医療制度には、まだまだ改善の余地があるといえるでしょう。