保険診療と自由診療

子どもが海外で手術を受けるのはなぜ?

一年に何度か、日本では治療が受けられず、このままでは命に危険がある子どもが海外へ渡航し、現地でドナーが現れるのを待つ…そんな話がニュースになることがあります。 また、多額の費用を賄うための募金に協力した経験のある人もいるでしょう。

しかし、そうした場合に「なぜ日本で治療ができないのか?」という疑問を持った人は少ないのではないでしょうか。


臓器移植とは?

日本の医療技術は他の先進国と比べても決して遜色ないレベルの高さです。 それを貧富の差に関係なく平等に受けられるという優れた国民皆保険制度も整っています。 にも関わらず、アメリカなど海外で臓器移植を受けようとする子どもが後を絶たないのはなぜなのでしょうか。

臓器移植とは文字どおり亡くなった人から健康な臓器を取り出して、病気や事故で失ったり正常に機能しなくなった人に移植することです。

そのためには、事前にドナー(臓器提供者)がその意志を明確にしておかなければなりません。と言うのも、死亡が確認されたら直ちに摘出・搬送されることになるので、抵抗を感じる遺族もいるからです。

最近では、日本臓器移植ネットワークに登録し、運転免許証や保険証に記入しておく方法が一般的になってきていますが、従来の臓器提供意思表示カードを携帯する方式でもよいでしょう。

提供できる臓器は心臓・肺・膵臓・肝臓・腎臓・小腸です。 臓器移植と同様、話題になることが多い生体肝移植や生体腎移植は、各病院が独自に行っていますので、日本臓器移植ネットワークは関与していません。


なぜ海外に行く必要があるの?

日本の「臓器移植法」では、15歳未満の臓器提供を認めていません。 つまり、体の小さな子どもが心臓や肝臓の移植を受けたくても、ドナーが存在しないということなのです。 臓器移植ができれば助かる命であれば、できる限りのことをしたいと思うのが親心。

そこで、手術費用はおろか渡航費用や滞在費まですべて自己負担であっても、わずかでもチャンスがある海外で治療をしようとするのでしょう。

もう一つのネックである、時には億単位になるそうした費用についても、一般家庭が工面することは困難なため、募金という手段に頼らざるを得ないのが現状なのです。

もちろん海外でも適合するドナーがすぐに見つかるとは限りません。現地には同じような疾患に苦しむ子どもがやはりいるわけですから、手術を受けられるかどうかは言葉は悪いかもしれませんが「運」もあるのです。

しかし、臓器提供者という母数が日本とはケタ違いなので、可能性はその分高くなると言えるでしょう。


意外!健康保険が適用される

臓器提供は完全な善意で行われる行為です。 そのため、提供しても遺族に報酬や謝礼などは一切発生しません。 では、レシピエント(提供される側)はどうでしょうか? 意外かもしれませんが、平成18年4月より小腸を除く他の臓器の移植と摘出には健康保険が適用されます。

被保険者やその被扶養者であれば3割負担でよいということですね。 それでも決して安いものではありませんし、臓器移植コーディネーターに手数料を支払わなくてはなりませんが、自由診療となればそれこそ一般家庭には手が届かない手術法になる可能性も考えられるのですから、ありがたい話ですよね。