保険診療と自由診療

不妊治療にはなぜ保険が適用されないのか?

少子高齢化に苦しむ日本では、不妊治療を保険診療にするべきでは?と思う人も多いかと思います。たしかに不妊治療に励む家庭では経済的負担が大きく、お金が続かずに挫折してしまうこともあるほどです。 しかし健康保険を適用するかどうかについては、私たちが考える以上に慎重な検討が必要とされています。


有用性が定かではない?

まず、健康保険で賄われる治療の基本は「健康を回復するもの」ということです。不妊治療は、症状にもよりますが基本的には健康自体を脅かすものではないため、この時点で対象から外されてしまいます。

たとえば禁煙外来が保険適用となったのは特殊な例で、これは喫煙を続けることによって他のさまざまな疾患が誘発され、医療財政にとっても不利であると判断されたためです。 少子化も長い目で見れば医療財政にとってマイナスなのですが、そこまで直接的ではないために二の足を踏まれています。

さらにもっとも肝心なのが、実は不妊治療の実績がまだよく分かっていない点です。不妊治療と一口にいっても、その種類は多岐にわたり、人工授精、体外受精、顕微授精のほか、女性もしくは男性どちらかに原因がある場合の治療も含まれますし、ホルモン療法、さらには漢方や鍼灸治療といったものまで入ってきます。 これらのすべてにおける治療実績を把握し、有用性が確認されないと保険適用にすることは難しいのです。

しかも人工授精では成功率5~10パーセント、体外受精では20~40パーセント、顕微授精では20~25パーセントと、決して「有用性が高い」とは言い切れないのが現状です。また医療機関によってもこの数値はかなり差があります。 もう少し有用性を示す確実なデータが出そろってからでないと、制度の変更は難しいのかもしれません。


保険商品化に向けた動きも

現在、不妊治療における助成としては、地方自治体から給付される助成金が主になります。人工授精や体外受精、顕微授精1回につき15万円を上限とするもので、以前と比べれば負担はやや軽減されたようです。 しかし回数制限が設けられていますし、場合によっては減額となることもあります。

今後も不妊治療をおこなう女性が増えるであろうことから、国も民間医療保険の商品として、不妊治療を対象とするものの販売を認める方向に動き出しました。しかし、保険商品ということは現在既に治療を開始している人は対象となりませんし、虚偽の申請もあり得るため、そのへんの対策はどうなるのか、といった問題もあります。

課題は山積みですが、子どもがほしいという気持ちそのものは贅沢でも何でもなく、人間として自然な望みといえるでしょう。また女性が婚期や出産のタイミングを逃してしまうことは、個人の責任とは一概にいえず、「名ばかり育児休暇」や社会のシステムとも無関係ではないはずです。 患者さんが負担なく治療に励める日が来ることが望まれます。