保険診療と自由診療

TPP参加で医療の自由化が進む?

昨今ニュースを賑わせているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。日本が参加するとなると、さまざまな商品に影響が出る見込みですが、中でも大きく変わるとされているのが医療です。 キーワードは「医療の自由化」。所得による格差が広がるかもしれない、今後の日本の医療について見ていきましょう。


国民皆保険制度が崩壊する?

私たちが恩恵にあずかっている国民皆保険制度は、「みんなでお金を出し合い、平等な医療を」という目的があります。高所得の人では負担額が大きくなってしまいますが、その分低所得の人の医療を支えながら、みんなで同じ品質の治療を受けられるようにしているのです。

しかしTPPに参加すると、このシステムが崩れる可能性があります。自由診療が主体のアメリカでは、日本よりも多種多様な保険商品を扱っていますので、自由診療を対象とした保険が多数入ってくるでしょう。

そのためには、日本の充実した国民皆保険制度は邪魔以外の何ものでもなくなります。日本政府が、強くNOを言えなさそうなことは、すでにTPP参加を見据えて、かんぽの新商品認可を凍結したことからも推測できます。

まずは混合診療を解禁するように強く求められるでしょう。混合診療とは、1つの治療の中で保険適用のものとそうでないものを同時におこなうことです。現在では歯科治療と、一部の先進医療で認められていますが、たとえば検査代は保険がきくから3割負担で、手術は自由診療になるから10割負担で、と会計を別にすることを指します。

これが全面解禁されるとなると、大抵の病院では自由診療に力を入れることになります。保険診療と異なり自由に価格を設定できるため、明らかに実入りが多くなるからです。患者さんは自由診療ばかり勧められ、「保険がきく治療だけで十分です」という人は歓迎されなくなる可能性もあります。


自由か平等か?それが問題だ

つまり現在の日本の病院では、患者さんの所得に関わらず親身に治療をしてくれますが、TPPに参加すると高額な自由診療が主体となり、金払いの良い患者さんだけが優遇される可能性があるのです。

報酬の少ない保険診療をやりたがる病院は少なくなり、利益重視になっていきます。日本医師会では、TPP参加を批判する立場をとっていますが、実際に解禁されたら一部の志ある医師しか保険診療に力を入れなくなることでしょう。

ただしその一方で、サービスや腕のいい医療機関が勝ち残り、医療の質が全体的に向上する可能性があることや、難病の効果的な治療法も確立されやすいといったメリットも考えられるのは確かです。

好きな医療を自由に受けられる社会か、それとも誰もが平等に高品質な医療を受けられる社会か?どちらが良いとするかを、私たちも自分の生活に直結するものとして考える必要がありそうです。